熱海の起雲閣で太宰治「人間失格」をつぶやく

いつからなのか、私の頭の中にある「行きたいところリスト」に載せていた ”熱海起雲閣”。正確には、名前がわからなかったので ”熱海のいいなーと思った建物”。静岡県建物巡りと称して、まずは熱海へ行くことに。

  

愛知県内の国道1号線と言えば、信号だらけ、トラックだらけで街の中を走る。正直うんざりする道路だと常々思っている。ただ、静岡県内に入ると、高速道路のようなつくりで、これがなかなか快適に走行できるところが多い。そんなわけで朝を早めに出発し三島辺りまで国1を走り続けた。

 

天気がよく富士山も!!ここ数年は縁がなく、いつもこの周辺に来たときは曇っていて見えなかったけど、今日はばっちり綺麗。富士山が見えるだけで心弾むのは、単純に日本人だから、ということ? 

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さーて、お目当ての起雲閣。狭い道路から駐車場へ入る。予想に反し、車は少ない。これならゆっくり見学できるかも!!(ここの併設駐車場は無料)

 

起雲閣の歴史には3人の富豪が登場する。

最初の富豪、海運王(内田信也)が別荘として建て完成したのが大正8年、次に鉄道王(根津嘉一郎)の別荘になると趣の違う洋館も建てられる。その後、桜井兵五郎の手に渡り旅館になると、起雲閣の名前が付けられ、そして2000年から現在までは熱海市が所有し公開されている。2002年 には熱海市指定有形文化財に登録された。

 

それはそうと、とにかく見てほしい。

最初に目にする部屋はこちらの「麒麟」

海運王(内田信也)が建てた大正ロマンの日本建築で、群青色の壁は旅館時代に塗り替えられた「加賀の青漆喰」。いきなりやられた感のある素晴らしい日本の美だった。 

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車いすだったお母さんのために、畳廊下との段差がないバリアフリー仕様になっているという。廊下にある大正ガラスの窓が外の景色を歪ませて見せた。

 

洋館「玉姫」に併設のサンルーム。

先ほどの和室とはガラリと変わって洋室に。これは鉄道王(根津嘉一郎)時代のもの。天井一面のステンドグラスの他、窓にもステンドグラス、床はタイル 張りと華やかだ。そして何より太陽の光を取り入れた明るい部屋。

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壁と天井の間にも唐草模様のデザインの彫が施されている。アイアンのランプシェードも面白い。じっくり見ているので、後ろから来たお客さんが次々通り過ぎていく。 あまり多くの人はいないので、予想通りゆっくり楽しむことができている。これはいい。

 

大きな窓から眺める庭。

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こちらが「玉姫」

 天井は「折上格天上」になっている。最近、格天井ってどこかで見たな?と思っていたら、名古屋城本丸御殿だった。

手の込んだ天井に、欄間?の透かしや、レトロなシャンデリアも素敵。暖炉もある。

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次の部屋は「玉渓」

ヨーロパの山荘風の部屋には、石造りの暖炉、その上には仏像と、その足元には獅子のレリーフも。色々な要素が混ざり合っていて、見ていて飽きない。

こんな部屋で暖炉に火を灯し、静かに読書でも楽しみたいな。

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ソファーの色も部屋にマッチして落ち着いた雰囲気だ。

 

淡い色使いの花がデザインされたステンドグラスも可愛い。 

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ドアに取り付けられている蝶つがいはデザインされた重厚なもの。

扉や柱には名栗と呼ばれる削りあとをわざと残した加工がされていて、表面に段差をもたせたつくりは丁寧な職人技のように見える。 

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天井はなんと竹。柱も名栗加工で温かみを感じるつくりだ。 私はこのいかにも削りましたよ、と言わんばかりの柱やドアがとても気に入った。

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玉渓を過ぎると、和室の展示室が並ぶ。

起雲閣を愛した文豪たちが紹介され、直筆の原稿や当時の手紙のコピーなどが展示されている。山本有三、志賀直哉、谷崎潤一郎、太宰治、船橋聖一、武田泰淳など。

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太宰治が人間失格を執筆した起雲閣別館はすでに取り壊されてしまったようで、パネルとして展示されていた。ちょっと残念。

(1948年3月7日から31日太宰治は起雲閣別館に滞在し「人間失格」を執筆

多くの著名人に愛われた起雲閣別館は昭和63年取り壊された)と書いてある。

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展示室を過ぎると今度は「金剛」という部屋へ。

小部屋の床は、変わったタイル張りで面白い。 

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この部屋にも石造りの暖炉がある。暖炉上部には螺鈿細工がされていて、シンプルながらも手が込んでいる。重そうなシャンデリアも個性的。

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 暖炉横の小さい扉?中国っぽいデザイン。

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ここでいきなりのお風呂。

「ローマ風浴室」

ステンドグラスの窓が素敵。でも、透けて外から見えないのかな? 

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鏡も。

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展示室へ行ったあとから、すっかり気分は太宰治。

人間失格を初めて読んだ時のことは忘れない。

 

いまは自分には、幸福も不幸もありません。

ただ、一さいは過ぎて行きます。

 太宰治「人間失格」より

 

そうつぶやきながら、

私はたぶん幸福なんだろうな、と思った。

 

起雲閣つづく。 

 

 

起雲閣

〒413-0022 静岡県熱海市昭和町4-2

開館時間 9:00~17:00(入館16:30まで)

休館日 毎週水曜日、12月26日~30日