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「心臓とひげ」は別の生き物だった。

中東・アフリカ

心臓とひげ

むかしむかし、あるところに、心臓とひげがおりました。

心臓もひげも貧乏で、いつも腹をすかせておりました。

 

こんな出だしから始まる。

奇想天外、なんだなんだ?と好奇心を揺さぶられるこのお話、「心臓とひげ」。

 

しんぞうとひげ (ポプラせかいの絵本)

 

 

実はこれ、アフリカの民話である。

誰かから誰かへ、語り継がれてきた話。聞く方はワクワク、話すほうも楽しかったに違いない。

 

タンザニアを中心に、民話をまとめた本、「アフリカの民話」の中の1つの話であるが

あまりのインパクトに心が躍った。

 

空腹すぎて、ひげが心臓を食べようと飛びかかる。

思わずクスッと笑ってしまう愉快さがある。

何せ、心臓もひげも別の生き物なのだ。

 

挿絵にはティンガティンガが描かれており、この滑稽さがまた面白い。話をさらに味わい深いものにしている。

挿絵を描いているのは、タンザニアティンガティンガ一筋アーティストであるモハメッド・チャリンダ氏。バオバブの木の下でアート活動を始めたそうだ。そんな素朴な光景を想像しながら、少し羨ましく思う。

心臓とひげの話は、別で1冊の絵本にもなっているので、小さい子供にもウケそうだ。

 

アフリカの民話~ティンガティンガ・アートの故郷、タンザニアを中心に~

 

アフリカの民話には全部で22の話が載っている。アフリカらしい動物たちや食べ物、呪術師なども登場し、日本の昔話とは雰囲気が違うが、それでも、残酷な話もあるところは共通する点だと思う。著者である島岡由美子氏が、アフリカの人々からスワヒリ語で直接聞いた話を、日本語でまとめたものだ。そして、それぞれ話の解説も書かれているので、文化の違う日本人にも楽しんで読めるような本になっているところが、魅力である。

タンザニアザンジバルは、かつてアラブオマーン帝国の首都で、奴隷の貿易港として栄えた歴史があり、アラブ文化とアフリカ文化が入り混じる独特な島である。民話の中にもその歴史が見え隠れしている。ジャンボ=こんにちは、などのスワヒリ語もあれば、アルハムドゥリラー=神の思し召しのままに、というアラビア語も出てくる場面もあり、アフリカ、アラブ両地域に興味のある私にとっては、とても面白く読ませてもらうことができた。

 

日頃、凝り固まった頭を柔らかくするにはもってこいの本。