猫系が恋に落ちた黒猫の絵画

 自分は猫系だと思っている。猫系であって、決して猫派ではない。 犬派、猫派というような類ではないということだ。子供の頃に聞かれて一番困った質問は「犬と猫、どっちが好き?」である。この質問は「お父さんとお母さん、どっちが好き?」に等しい。そしてこの二つだけは比較してはならないものと思って生きてきた。

 では猫系と言い張る理由は何なのか。ツンデレだからというのも違う。そういうものではない。単純にトカゲを見ると手が出るからなのだ。トカゲといっても、足元を素早くすり抜けていくようなコモノのトカゲのことであって、コモドオオトカゲのようなヘビー級な奴らのことではない。(ヘビー級な奴らにもそそられているのは確かだが。)

 この手が出てしまうという行為は困ったもので、他人様の前でもうっかりやってしまうのだが、以前そんな私の姿を見た友人は、口を開けたまま動かざること山の如くその場で温かく見守っていてくれた。その白い瞳に、なぜだか顔が熱くなったことを記憶している。

 昔、ベッドを共にしていた猫は、外へ出かけてはお土産を持ち帰った。リビングの床でうごめいているのは、まさに彼女が持ち帰った戦利品、トカゲのしっぽだった。中には、うごめいていると言うよりは、飛び跳ねているとも言える活きのいいのもいた。私はそれを見つけるたびに彼女には内緒で、そっと庭に放り投げていた。戦利品に嫉妬していたのか、張り合っていたのかは定かではないが、いつの間にか私もトカゲを追う習性が身についてしまったのだ。断っておくが、うごめく先端部分だけが欲しかった、というマニアックな領域には、まだ足を踏み入れたことはない。

 こうして私は着実に猫系への道を歩んできた。ただ、トカゲには軽くスルーされる日々が今もなお続いている。

 

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 さてそんな猫系の私が、先日、旅先で出会った黒猫がいる。赤い花がよく似合うその彼は北村康郎さんが描いた絵の世界に住んでいた。まさに旅先の恋。一目惚れというやつだ。日頃から友人には「ストライクゾーンが広くていいね」と褒められている私ではあるが、いかがなものか、イケメンなその彼を”ド真ん中”と感じる人も少なくはないだろう。

 

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*沼津御用邸記念公園え行われていた北村康郎 日本画展パンフレットより

 

 これは静岡県にある「沼津御用邸記念公園」の中、皇室の薫りが漂う建物で特別展として開催されていたときのものである。ま、簡単に言えば、記事を書くのがあまりにも遅いので、その間に開催期間はとっくに終わってしまったというありさまなのだ。何という失態。次の開催場所を紹介すればいいと思っていたが、そんな予定も見当たらずただ途方に暮れているしだいである。

 このパンフレットの絵以外にも、黒猫X赤い花を描いたものがあり、ドキドキしながら眺めていたのではあるが、なにぶん床が冷たく、単なる猫系である私には肉球も備わっていないため、そそくさと退散することとなったのである。

 その後ストーカーのようになった私は、北村康郎さんについて調べていた。沼津在住ということなので、また周辺での個展を期待しつつ、わかったことをここに書き残しておこうと思う。日本の季節の花々をメインに描かれているそうで、猫は一部の作品にのみ登場する。

 
 1972年 岐阜県大垣市生まれ
 1998年 日本画を始める
 2005年 モナコ国際芸術祭 名誉賞受賞
 2007年 連展 文部科学大臣賞受賞
 2010年 静岡県日本画展 佐野美術館賞受賞
 2011年 日仏現代国際美術展 協会賞受賞
 2013年 日仏現代国際美術展 国際芸文化大賞受賞
         静岡県美術家連盟展  静岡放送賞受賞
  現  在   サロン・ブラン美術協会委員
         静岡・沼津・三島・御殿場にて 絵画教室主宰
         沼津市在住
   

 いつかどこかでまた会える日を楽しみに。